「家族葬10.45万円~」
この広告を見れば、10万円台で家族葬ができると思う方も多いのではないでしょうか。
2026年9月に消費者庁は小さな森の家を運営する金宝堂に対し、この料金表示が有利誤認にあたるとして措置命令を行いました。
さらに前年の2025年には、家族葬のらくおう(現在は小さなお葬式に変更)でも家族葬の料金表示について適格消費者団体から申入れが行われていました。
では、これは一部の葬儀社だけの問題なのでしょうか。
この記事では、小さな森の家とらくおうの事例、国民生活センターの相談データ、アメリカ・イギリスの葬儀規制をもとに、葬儀の「○万円~」表示にどのような問題があるのかを解説します。
あわせて、最低価格に惑わされず、葬儀費用で後悔しないために遺族ができる5つの対策も紹介します。
2026年9月|小さな森の家に消費者庁が措置命令
#消費者庁は、㈱金宝堂が提供する「小さな森の家」と称する貸切ホールを用いる家族葬に係る #葬儀 サービスの取引について、最低料金として10.45万円で提供されるかのような表示が、 #有利誤認 に該当し、 #景品表示法 に違反するものとして、措置命令を行いました。https://t.co/ZHan9nbxFR pic.twitter.com/r1bNV1ZR31
— 消費者庁 (@caa_shohishacho) September 18, 2026
消費者庁は2026年9月18日に「小さな森の家」を運営する株式会社金宝堂に対して、景品表示法に基づく措置命令を行いました。
2025年3月から5月に放送されたテレビCMが問題になりました。
CMでは「1日1組 貸切ホール」「お得なプランがこの価格から」などの表示とともに、
「家族葬 10.45万円~(税込)」と大きく表示されていました。
「家族葬10.45万円~」に対して実際は30.8万円以上
消費者庁によると、このテレビCMは貸切ホールを利用する家族葬が10万4,500円で提供されるかのような表示でした。
しかし実際には、わずかな場合を除いて30万8,000円以上が必要だったとされています。
単純に比較すると、広告で大きく表示された10万4,500円と、実際に必要とされた30万8,000円以上では約3倍の差があります。
この表示について消費者庁は、実際よりも著しく有利な条件で利用できると一般消費者に誤認させる 有利誤認表示 に該当すると判断しました。
10万円という表示が問題ではない
10万円前後で葬儀サービスを提供することが問題ではありません。
以前の記事でも紹介したように、式場を利用しない直葬であれば、10万円前後の葬儀プランを提供することはできます。
【関連記事】10万円以下の格安葬儀の注意点とトラブルを防ぐ方法
「10万4,500円で何ができるのか」が利用者に正しく伝わっていたかどうかが問題です。
「家族葬」「1日1組貸切ホール」という言葉と一緒に10万4,500円と表示されれば、貸切ホールで家族葬ができる価格だと受け取る方がいても不思議ではありません。
しかし、実際にはほとんどの場合で30万8,000円以上が必要でした。
消費者庁が求めたのは違反事実の周知と再発防止
今回の措置命令で金宝堂に対して、
- 今回の表示が景品表示法に違反することを一般消費者に周知する
- 再発防止策を講じ従業員に周知する
- 今後は同様の表示を行わない
ことなどが命じられています。
今回の措置命令は消費者庁が示した期間に放送されたテレビCMの料金表示で、小さな森の家のすべての葬儀や現在のすべての料金表示が違法としたものではありません。
しかし、葬儀を依頼する側には重要な事例です。
広告に「家族葬○万円~」と書かれていても、その数字では実際に希望する葬儀の総額は分かりません。
このような料金表示をめぐる問題は、小さな森の家で初めて起きたわけではありません。
2025年には「らくおう」(現在は「小さなお葬式」に屋号変更)でも料金表示をめぐり申入れ
小さな森の家の措置命令が出る前年の2025年に、「家族葬のらくおう」(現在は小さなお葬式)の料金表示についても問題が指摘されていました。
「家族葬のらくおう」の名称で葬儀事業を運営するライフアンドデザイン・グループ西日本株式会社に対して「申入書」を送付しました。>KC’sウェブサイトよりhttps://t.co/2g5UyckhKT
— 消費者支援機構関西(KC’s) (@KC_s) June 12, 2025
適格消費者団体の消費者支援機構関西は、らくおうを運営していたライフアンドデザイン・グループ西日本株式会社のウェブサイトなどについて、景品表示法上の問題があると判断し、2025年6月2日付で表示の停止や修正を求める申入れを行っています。
「家族葬7.6万円~」で提供されるのは直葬・火葬式だった
「家族葬 76,000円~」という表示が問題になりました。
消費者支援機構関西の申入書によると、7万6,000円(税抜)から提供されていたのは、通夜・告別式を行わない「直葬・火葬式プラン」でした。
一方、同社のウェブサイトでは「火葬式・直葬」と「家族葬」を別の葬儀形式として表示しており、家族葬については通夜・告別式を行うものとして説明されていました。
「家族葬7.6万円~」という表示を見た方が、「7万6,000円で通夜・告別式を行う家族葬ができる」と受け取る可能性があるが、実際にその金額で提供されるのは、より簡素な直葬・火葬式だったということです。
消費者支援機構関西は、この表示について景品表示法上の優良誤認・有利誤認に該当すると考え、表示の停止を求めました。
ここでも問題は、7万6,000円という価格ではありません。
10万円以下で行える葬儀プランは実際にありました。
その価格でどのような葬儀ができるのかが利用者に分かりやすく伝わっているかどうかです。
家族葬では式場使用料11万円が必要と指摘
もう1つ問題として指摘されたのが式場使用料です。
申入書では、家族葬プランでは通夜・告別式を行うため式場が必要になり、11万円(税込)の式場使用料が必ず計上されるとしています。
そのため、表示されたプラン料金に11万円を加えた金額が、実際の最低料金になると指摘しました。
「家族葬80」と表示されていても、必ず追加される式場使用料が含まれていなかったそうです。
パンフレットには「式場使用料は別途かかります」と記載されていましたが、式場使用料そのものの金額は表示されていませんでした。
葬儀社を選ぶ側からすると、
「別途必要です」と書いてあるだけでは、最終的にいくら必要なのか分かりません。
申入れ後に対象となった表示は削除・修正
この申入れに対し、同社は2025年6月27日付の回答で、経営方針の変更に伴い、指摘された表示物を削除・修正したと回答しています。
その後、消費者支援機構関西が確認したところ、申入れの対象となった表示は行われていなかったため、2025年8月をもって申入れ活動を終了しました。
経営方針の変更についてSNS上では以下のような指摘が多数ありました。
らくおうが、評判悪くなったから小さなお葬式ホールに変えるってやつですかね。 https://t.co/m7rnDGgAEf
— 佐藤信顕@葬儀葬式ch 日本一の葬祭系Youtuberです+減税会 (@satonobuaki) June 21, 2025
【関連記事】「小さなお葬式ホール」合併で高額請求リスクは?らくおう利用者の口コミから分析
小さな森の家とらくおうに共通する葬儀サービスの問題点
小さな森の家とらくおうでは、問題になった表示と法的な位置づけは異なります。
しかし、消費者側から見ると共通する問題があります。
広告で大きく表示された最低価格だけでは、依頼者が希望する葬儀の総額が分かりにくいことです。
「○万円~」だけでは葬儀の内容が分からない
「家族葬プラン」という名称が同じでも
- 通夜・告別式を行うのか
- どのような式場を利用できるのか
- 安置日数は何日分含まれるのか
- 別途必要になる費用はあるのか
によって総額が大きく変わります。
そのため「家族葬○万円~」という最低価格だけを比較しても、どちらが安いのかは判断できません。
重要なのは「いくらから」ではなく「その金額で何ができるのか」を確認することです。
依頼してから総額が分かる情報の非対称性
葬儀は家族を亡くした直後に短時間で葬儀社を決めることが多く、普段の商品やサービスのように時間をかけて比較するのが難しいサービスです。
葬儀社と遺族では、料金や必要なサービスについて持っている情報にも大きな差があります。
そのため、安価な広告を見て依頼したにもかかわらず、打ち合わせを進めるうちに想定していた金額を大幅に超えてしまうことがあります。
葬儀の料金トラブルは一部の葬儀社だけの問題ではない
#金宝堂 の #小さな森の家 に #公益社 の #ファミーユ に #ティア に #ユニクエスト の #小さなお葬式 などネット系葬儀社紹介会社にその直営葬儀社および下請け葬儀会社もしくはブラック冠婚葬祭に小規模多店舗型葬儀社。これらは広告と実際の請求額と大きく乖離する。 https://t.co/5BpeRrbkJN pic.twitter.com/Vw0b7gyQjB
— 本多崇興_Takaoki_Honda@Renkouji-Yokohama.com (@JZ1300) September 26, 2026
小さな森の家やらくおうの事例を見ると、一部の葬儀社の問題のように感じるかもしれませんが、国民生活センターには葬儀サービスに関する相談が年間900件前後寄せられています。
2025年度は52.6%が「高価格・料金」に関する相談でした。
2019年度の33.2%から比べると割合は大きく増えています。
「一日葬約30万円」というチラシを見て依頼したところ約80万円になったケース
「家族葬50万円」という表示を見て依頼したものの、追加費用などで200万円を超えたケースもありました。
また、口コミサイトの「みん評」に掲載されている葬儀社への苦情の多くは費用に関することです。
参考:【辛口評価】葬儀社の口コミランキング
【辛口評価】格安葬儀サービスの口コミランキング
国民生活センターも葬儀はサービスや費用項目が複雑なうえ、身近な人を亡くした直後に冷静な判断をすることが難しく、説明不足や理解不足によって料金トラブルにつながることがあると指摘しています。
つまり、「広告で見た金額と実際の葬儀費用が違う」問題は、一部の葬儀社だけ終わる話ではありません。
アメリカとイギリスでは葬儀料金をどのように規制している?
日本では2025年に「らくおう」の料金表示について申入れが行われ、2026年には「小さな森の家」のテレビCMについて消費者庁が措置命令を出しました。
では、海外では葬儀料金をどのように扱っているのでしょうか。
アメリカやイギリスでは、葬儀料金そのものに上限を設けているわけではありません。
しかし、遺族が価格やサービス内容を比較できるように、葬儀業界に対して価格表示や情報開示のルールを設けています。
アメリカ|商品やサービスごとの価格を確認できる
アメリカではFTC(連邦取引委員会)のFuneral Rule(葬儀規則)によって、葬儀社はGeneral Price List(一般価格表)で商品やサービスの個別価格を、利用者が確認できるようにする義務があります。
「家族葬○万円」というセット価格だけではなく、アイテムとサービスにいくらかかるのかを確認してから選べる仕組みが制度として作られています。
アメリカの葬儀制度についてはnoteで詳しく紹介しています。
【関連記事】
なぜ日本の葬儀は規制されないのか?【第1回】アメリカはなぜ葬儀が“消費者保護”になるのか
なぜ日本の葬儀は規制されないのか?【第2回】日本の葬儀はなぜ“価格が見えない”のか
イギリス|同じ形式の価格表で比較できる
イギリスではさらに一歩進んでいます。
CMA(競争・市場庁)のFunerals Market Investigation Order 2021 により、葬儀社は共通形式の「Standardised Price List」を店舗やホームページに掲載する必要があります。
特徴的なのは、
- 参列者がいる葬儀(Attended Funeral)
- 参列者がいない葬儀(Unattended Funeral)
上記を分けて価格表示することです。
さらに、参列する葬儀では決められた項目ごとの価格と総額を表示します。
追加サービスについても別途価格表を示します。
この仕組みなら「家族葬○万円~」の価格を見るのではなく、
その価格が参列する葬儀なのか、直葬に近い葬儀なのかを消費者が比較しやすくなります。
「らくおう」のような家族葬という表示の最低価格が直葬だった問題を考えると、非常に参考になる制度だと思います。
日本との大きな違いは「比較できる状態」を作っていること
アメリカとイギリスでは制度の内容は異なります。
しかし共通しているのは、
葬儀社の説明だけに任せるのではなく、消費者が価格や内容を比較できる仕組みを制度として作っていることです。
日本にも景品表示法などの消費者保護制度があります。
小さな森の家の料金表示について措置命令が出された理由はこの仕組みによるものです。
一方で、アメリカのFuneral Ruleやイギリスの標準価格表のように、葬儀サービスに特化して価格やサービス内容を比較しやすくする仕組みとは異なります。
私は以前にnoteで、アメリカのFuneral Rule、日本で価格が見えにくい理由、行政が介入しにくい構造などを書きました。
海外との制度の違いや、日本の葬儀業界に同じような仕組みが必要なのかについては、こちらで詳しく紹介しています。
【関連記事】
・なぜ日本の葬儀は規制されないのか?【第1回】アメリカはなぜ葬儀が“消費者保護”になるのか
・なぜ日本の葬儀は規制されないのか?【第5回】葬儀サービスの「問題」が「違反」にならない構造
ただし、日本で新しい制度が作られるとしても、すぐに葬儀の料金表示が変わるとは限りません。
それまで遺族はどうすればいいのでしょうか。
現在の制度の中でもできる対策を紹介します。
規制に頼らない遺族ができる5つの対策
1.「○万円~」ではなく総額を確認する
テレビやウェブ広告に表示されている最低価格で葬儀社を選ぶことは止めましょう。
確認するのは、
自分が希望する葬儀をした場合、最終的にいくら必要なのか です。
- 通夜・告別式を行うのか、省くのか
- 人並みにするのか、費用を重視するのか
- 火葬する日までの安置料金
- 料理・返礼品
上記により葬儀費用は大きく変動します。
火葬料金は葬儀社に関係なく同じですが、確認しておきましょう。
2.「普通は~」に惑わされない
葬儀の打ち合わせで、
「普通は~」
「皆さんこれくらいです」
「一般的には~」
と言われることがあります。
しかし、他者の葬儀と自分に必要な葬儀は別の話です。
葬儀費用の全国調査で公開されている金額は接待費まで含まれています。
家族だけであれば接待費は不要になります。
大切なのは他者に合わせることではなく、自分の予算と必要な内容に合っているかです。
【関連記事】葬儀費用の平均は96万円?中央値との違いと本当の相場を解説
3.低評価の口コミを確認しておく
私は葬儀社を探すとき口コミを確認することをおすすめしています。
ただし、星5が多い=安心できる葬儀社と単純に判断するのも注意が必要です。
派遣された担当者(関係者枠として)良い口コミを書いているところも多いんですよね。
— 「死神さん」の和田(Grim Reaper) (@YEY2KSHONAN) September 24, 2026
うちにも来ましたよ。
毎月30万のコンサル料と派遣でってwww
小さな森以上にもっとヤバいところ知っているわw
この投稿だけで特定の葬儀社の口コミが不正だと判断することはできません。
だからこそ、星の数だけを見るのではなく、
「葬儀総額はいくらだったのか」
「追加費用は何だったのか」
「担当者からどのような説明を受けたのか」
など、具体的な内容が書かれている口コミを確認することが重要です。
良い口コミだけでなく、低評価の口コミもあわせて読んでください。
【関連記事】葬儀の口コミを書いてほしい理由|高額請求を防ぐ情報共有のすすめ
葬儀の口コミは信用できる?葬儀社選びで後悔しない読み方を解説
4.同じ条件で複数の葬儀社から見積もりを取る
実際に依頼する前に2~3社から見積もりを取ってください。
ただし、
A社は直葬
B社は一日葬
C社は家族葬
では比較になりません。
参列人数、葬儀形式、式場、安置日数、料理、返礼品など、できるだけ同じ条件を伝えて比較します。
そうすれば「どこが安いのか」ではなく、「同じ内容ならどこがいくらなのか」が分かります。
【関連記事】葬儀の相見積もりで抑える3つのポイント
5.見積もりに納得できなければ葬儀社の変更も検討する
ご遺体を葬儀社に安置してもらった後に見積もりを確認し「思っていた金額と違う」と気づくこともあります。
事前相談で「価格も手ごろでよかったなぁ」と
— 佐藤信顕@葬儀葬式ch 日本一の葬祭系Youtuberです+減税会 (@satonobuaki) September 28, 2026
思っていると、痛い目に合うパターンがあります。
それは見積もりは二度出るという事です。
事前の見積もりの他に、実際の葬儀の時における二度目の見積もりというのが存在します。
理由は何だっていいんですが
「ご希望と状況が違います。」…
このように事前相談を利用して高額請求する葬儀社も存在します。
葬儀社に安置した状況では「もう断れない」と思ってしまう方もいるでしょう。
しかし、見積もり金額に納得できないのであれば、キャンセル料や搬送費などの条件を確認したうえで、別の葬儀社へ変更する選択肢もあります。
【関連記事】葬儀の見積もりが高いと感じたら?キャンセルして後悔を防ぐ方法
まとめ|葬儀は最低価格ではなく「その価格で何ができるか」を確認する
2026年9月、小さな森の家の「家族葬10.45万円~」という料金表示について、消費者庁が景品表示法上の有利誤認にあたるとして措置命令を行いました。
その前年には、らくおう でも家族葬の料金表示について適格消費者団体から申入れが行われています。
両者は内容も法的な位置づけも異なりますが、消費者側から見ると共通しているのは、
「広告で大きく表示された最低価格だけでは、実際にどのような葬儀ができるのか分かりにくい」ということです。
大切なのは、
「○万円~」ではなく、「その金額で何ができるのか」を確認することです。
- 自分が希望する葬儀内容と合っているのか
- 最終的な総額はいくらになるのか
- 他の葬儀社と同じ条件で比較したのか
上記のことは確認してください。
アメリカやイギリスでは葬儀の商品やサービスを比較しやすくするため、価格表示や情報開示について日本より具体的なルールが設けられています。
今後の日本でも葬儀サービスに合った価格表示の仕組みが必要なのかもしれません。
しかし、制度が変わるまで待つことはできません。
- 最低価格だけで決めない。
- 低評価の口コミを確認する。
- 総額で確認する。
- 事前に相見積もりをする。
- 納得できなければキャンセルする。
葬儀は家族を亡くした直後に短時間で決断を求められる特殊なサービスです。
だからこそ、事前に少しでも知識を持っておくことが、葬儀費用で後悔しないための対策になると思います。
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