土葬とは現在は行われていないと想像される方が大半ではないでしょうか?
確かに日本の火葬率は世界でトップです。
しかし100%ではありません。
わずかですが、現在でも土葬は行われています。
今回は土葬を行うために必要な埋葬許可証の取得から京阪神エリアで土葬をする方法を調べました。
土葬とは?
土葬とは遺体を土に埋める葬送です。
現在の日本国内でも土葬は、「墓地、埋葬等に関する法律」において火葬と並び「埋葬」として認められています。
大阪府の条例においても
(埋葬の方法)
大阪府墓地、埋葬等に関する法律施行条例
第二十条 墓地の経営者は、埋葬をさせるときは、地表まで一・五メートル以上の余地を残してこれをさせなければならない。
上記のように、埋葬の方法が記載されています。
条件さえ整えば、現在の大阪府でも土葬は可能です。
ただし埋葬が許可された墓地(霊園)以外では土葬はできません。
市町村の条例や、墓地(霊園)の規則で土葬が禁止されていることがあります。
墓地の使用規則に「埋葬」の記述がなく、「焼骨を埋蔵」としか記載されてなければ土葬はできません。
現在でも埋葬が認められた墓地(霊園)であれば土葬は可能です。
ちなみに遺体を墓地以外の場所に埋めることは犯罪になります。
2022年の厚生労働省「埋葬及び火葬の死体・死胎数並びに改葬数」によると、死亡人数1,628,048名のうち埋葬(土葬)された方は490名と約0.03%です。
ちなみに2008年は死亡人数1,169,397名のうち埋葬(土葬)された方は1,668名と約0.14%でした。
埋葬(土葬)は14年間で激減しました。
代表的なところでは、宮城県が382名が0名、岐阜県は107名が0名、三重県は130名が0名、奈良県が167名が0名など14年間で土葬が消滅した県がありました。
埋葬許可証の取得方法
土葬の手続きは火葬と同様に、役所に死亡届を提出する際に行います。
書類の名称が「死体火葬許可証」でなく、「死体埋葬許可証」に変わるだけです。
ただし、役所での手続きの際に、土葬する霊園名・住所・連絡先が必要となります。
上記で述べた通り、土葬は許可された墓地でしか行えません。
埋葬が許可された墓地であるのか、役所が確認をします。
私が土葬を担当した際には、役所に遺族と同行してもらいました。
埋葬する場所を申請するために、墓地の地図を見て確認して行いました。
余談になりますが、火葬した遺骨(焼骨)をお墓に納骨することは、法律用語で「埋蔵」と呼びます。
「火葬許可証」は火葬が終わったら「埋葬許可証」になると説明している業者がいますが間違いです。
墓地や納骨堂に遺骨を納める際に必要な書類は、「火葬済と記載された火葬許可証」です。
「火葬許可証」が「埋葬許可証」になることはありません。
「埋葬許可証」とは土葬する際に必要な許可証です。
土葬が激減した理由
土葬が激減した理由は、穴を掘る人手の確保が困難になったからです。
戦後の高度成長期を経て、都市化による人口移動により都市部では火葬が普及しました。
しかし、山奥の一部の地域では土葬が一般的な葬送として残っていました。
土葬に興味ある、火葬が普及した時代背景を知りたい方は以下の本をオススメします。
これは恐らく、現存する最後といっていい土葬の村の記録である。
村人は、なぜ今も「土葬」を選ぶのか?日本の伝統的な葬式である「土葬・野辺送り」が姿を消したのは、昭和の終わり頃とされている。
入れ替わるように火葬が増え、現在、日本の火葬普及率は99.9%を超える。
土葬は、日本の風土から完全に消滅してしまったのだろうか?筆者は「土葬・野辺送り」の聞き取り調査を30年にわたって続け、平成、令和になっても、ある地域に集中して残っていることを突き止めた。
それは大和朝廷のあった奈良盆地の東側、茶畑が美しい山間にある。
剣豪、柳生十兵衛ゆかりの柳生の里を含む、複数の集落にまたがるエリアだ。日本人の精神生活を豊かにしてきた千年の弔い文化を、まだ奇跡的に残る土葬の村の「古老の証言」を手がかりに、詳らかにする。
amazonの書籍紹介より抜粋
ルポ 日本の土葬――99.97%の遺体が火葬されるこの国の0.03%の世界
ジャーナリスト・高野孟氏、推薦!
「日本の多文化共生の可能性を現場から突き詰める秀逸なルポだ!」亡くなった遺体の99.97%が火葬される現代日本。しかし、その日本にも「土葬」を求める人々がいる。2020年に大分県で起きた、土葬墓地建設を目指すイスラム移民と地域住民の対立をきっかけに、今の日本で「土葬」を求める人々をたずね、全国を徹底取材。イスラム移民、伝統的神葬祭、そして新しい形の葬送を求める人々など、そんな0.03%の世界の、「いま」を追う。戦後の衛生行政が切り捨てていった土葬文化。国際化の陰で急増する、宗教的事情から土葬を求める移民たち。そして独自の死生観のなか新しい葬儀を模索する人々……。日本の「死」の現場の今とこれからが見えてくる、珠玉のルポルタージュ。
amazonの書籍紹介より抜粋
土葬で最も大切なことは、穴を掘る作業です。
2メートル程の深さまで掘るには多くの人手が必要です。
伝統的な土葬で穴を掘るのは、その地域の方たちです。
その地域で生きてきた人を、地域の人たちで送ることが土葬です。
多数の協力がなければ土葬はできません。
土葬が習慣として残っていたのは、都市部ではなく山奥にある一部の地域です。
このような地域では高齢化・過疎化が進み、縁故関係が疎遠になり、穴を掘る人手が少なくなっています。
土葬が激減したのは、地域の方たちの協力を得ることが困難になったからでしょう。
火葬なら火葬場に連れて行くだけで、葬儀社が用意する霊柩車だけで対応できます。
現在の土葬
日本国内では土葬は激減しましたが、国際的には一般的な葬送です。
特にムスリム(イスラム教を信仰する人)にとって土葬は望まれる葬送です。
国内にある土葬墓地の大半は、ムスリムに提供されています。
場所は限定されますが、ムスリムの土葬は可能です。
また土葬を信仰でなく個人の価値観で希望とされる方もいらっしゃいます。
火葬率が99.9%を超える国内で、土葬を実現するためには事前に以下の準備が必要です。
土葬をする場所を決めておかなければ、死亡届を提出することができません。
一般的な葬儀では、葬儀場所と火葬場の場所は離れていません。
都市部で葬儀をするなら、埋葬する場所は近隣にありません。
埋葬する場所が葬儀場所から遠ければ、葬儀会社は断るかもしれません。
前もって葬儀会社と相談して、土葬する墓地まで搬送してもらえるのか確認しておきましょう。
また、火葬料金は1~2万円ですが、土葬は高額になります。
土葬は土地の使用料とは別に穴を掘り埋め戻す費用がかかります。
穴を掘るためには専門業者に依頼しなければ対応できません。
一般的な葬儀に関しては葬儀社に頼ることをオススメしますが、
土葬に関しては葬儀社に頼ることをオススメしません。
ほとんどの葬儀社では土葬の経験はないでしょう。
経験のないことにアドバイスをすることはできません。
土葬に関する知見が多い専門家に頼ることをオススメします。
山梨県にある「土葬の会」は、土葬を望む方にとって注目しておく団体です。
京阪神エリアで土葬できる墓地
土葬するには、埋葬の許可を取得した墓地で行います。
しかし、国内では土葬できる墓地は限られています。
京阪神エリアで現実的な場所を調べました。
大阪イスラミックセンター橋本
和歌山県橋本市彦谷752-1にある、ムスリム墓地です。
ムスリム以外の利用はできないようです。
料金に関しての記載はありませんでした。
京都 高麗寺国際霊園
住所は〒619-1401 京都府相楽郡南山城村童仙房簀子橋13番地です。
韓国仏教の代表的宗派である曹溪宗(そうけいしゅう)の寺院墓地になります。
寺院墓地ですが、国籍・宗派・宗旨・信仰の有無に関係なく利用できます。
料金は 基本料金が25万円(墓地サイズ:縦2m×横1m×深さ2m)
堀削埋戻残土処分料 13.2万円
墓地管理料 1,100円/月*永代管理用としてのお支払いも相談可と記載
土葬で手間のかかる穴掘りを霊園が行ってくれます。
京阪神エリアで一般の方でも土葬ができる唯一の霊園です。
より詳細なことは高麗寺国際霊園のホームページでご確認ください。
その他(自分で調べる)
原則として埋葬(土葬)は、市町村の条例で禁止されていなければ可能です。
30年ほど前の1990年代では、地方において土葬は行われていました。
つまり、地方において土葬の許可が下りている墓地は少なからずあります。
土葬ができる墓地であるのか調べるには、地方のお寺の僧侶に教えてもらうことしか浮かびません。
地方の葬儀社に勤務していたときに、「昔はこのあたりは土葬だった」と僧侶から教えてもらったことがありました。
選択肢として挙げていますが、現実的には困難でしょう。
神戸市立外国人墓地
住所は〒651-1102 兵庫県神戸市北区山田町下谷上中一里山4−1です。
神戸市が所有する公営の外国人墓地で土葬エリアがあります。
ただし、利用できるのは神戸市に居住する外国人で、神戸市が承認した故人のみとハードルが非常に高いです。
宗教も限定されているようです。
日本人の利用は、埋蔵もしくは埋葬されている故人の親族に限定されています。
現在でも土葬エリアがあるので挙げていますが、現実的ではありません。
まとめ
私自身が土葬の担当したころは、会社の先輩からアドバイスをもらうことができました。
現在でも土葬の相談をされたら、個人的には対応することが可能です。
土葬の流れを体験していないと、アドバイスをすることは難しいと思います。
現在の葬儀社で土葬を担当した社員はほとんどいないでしょう。
土葬を希望するなら、葬儀社に頼ることなく事前に相当の準備をしなければなりません。
この記事が、土葬に関心がある方に少しでも役に立てれば幸いです。
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