エンバーミングと湯灌で後悔しない方法

お葬式

エンバーミングは徐々に認知されている言葉です。
エンバーミングの日本語は「遺体衛生保全」になります。

事前相談でエンバーミングの話題が出たり、葬儀の打ち合わせで提案することが増えてきました。
誤解されたり、「湯灌(ゆかん)」「ラストメイク」と混同されている方も多いと感じます。
以前にエンバーミングを依頼して後悔された方もいらっしゃいます。

  • そもそもエンバーミングって何?
  • エンバーミングと湯灌はどう違うのか?
  • エンバーミングが必要か疑問だ!

上記の疑問に答えていきます。
そして、エンバーミングと湯灌で後悔しないために、知っておくことや注意することを解説します。

葬儀社がエンバーミングを強く勧める理由については以下の記事で紹介しています。

エンバーミングとは

エンバーミングとは、以下の手順で進めます。

  1. ご遺体を専用の施設まで連れて行く。
  2. 衣服を脱がして全身を洗浄する。
  3. 感染症の予防のために消毒、殺菌する。
  4. 防腐処置を行い、必要に応じて修復する。
  5. 希望に合わせて口ひげ・あごひげを整え、化粧する。
  6. 遺族の希望する衣装を着せて棺に納める。
  7. 式場や自宅など葬儀を行う場所に連れて行く。

防腐処置では、腹腔の体液や残留物を除去するために外科的な処置を行います。
そして血液をアルデヒド系の防腐剤と入れ替えます。

小豆小僧
小豆小僧

エンバーミングではご遺体を切開するので、
文書による遺族の同意が必要になります。

日本では火葬が前提なので、保全期間は50日とIFSA(一般財団法人日本遺体衛生保全協会)の基準で決められています。

エンバーミングの特徴は以下の通りです

  • 海外に搬送する際は義務になっている。
  • 防腐処置を行うので、ドライアイスが不要になる。
  • 血液と入れ替える防腐剤に着色すれば、肌の血色がよく見える。
  • やつれた表情や、損傷を修復することができる。
  • 消毒・殺菌を行うので感染症の予防になる。
  • 目・鼻・口からの出血や、消化器官の残留物の吐出がなくなり、異臭を防ぐことができる。

エンバーミングの特徴を把握しておくことで、必要なサービスであるのか判断できます。

エンバーミングの現状

エンバーミングを施術するのは「エンバーマー」と呼ばれる専門職です。
日本でエンバーマーになる主な方法は、IFSAが認定した2年制の専門学校で勉強して、卒業後に資格を取得することです。
日本では約300名のエンバーマーが全国で活躍されています。
1人のエンバーマーが処置できるのは最大で1日2~3件だそうです。

2022年のエンバーミング件数は70,597件です。
2020年のエンバーミング件数は53,041件なので2年で約18,000件増えています。
2022年の死亡者数は156万8961名なので、
エンバーミングの実施率は約4.5%

2024年の死亡者数は161万8684名で、
エンバーミング件数は82,068件でした。

小豆小僧
小豆小僧

2024年のエンバーミング普及率は約5%です。

これからも件数は減ることはなく、増えていくことが予想されています。
増えていく要因として、火葬場の老朽化による火葬件数の減少、
死亡数の増加による火葬までの待機期間の長期化による遺体の保全対策などが挙げられています。
また、エンバーマーは毎年増えているので、供給の点からも件数は増えていきます。

2023年においてエンバーミング処置できる施設は、
日本に85か所あり28事業会社が運営しています。
2024年には90施設になり、1年間で5施設増えました。

エンバーミング施設は北海道から沖縄まで全国に点在していますが、
47都道府県の全てにはありません。
専用の設備が必要なので、自宅や式場でエンバーミング処置をすることはできません

エンバーミング施設を運営するのは、葬儀社と納棺業者です。
葬儀社がエンバーミング施設を運営することで、
エンバーミングを自社商品として販売して
葬儀単価を上げることができます。

納棺業者はエンバーミング施設を所有しない葬儀社からの依頼を受けたり、
自社のホームページで遺族から直接依頼を受けています。

小豆小僧
小豆小僧

エンバーミングの相場は15~25万円です。
エンバーミング施設への搬送料金が加算されることもあります。

湯灌(ゆかん)とは

湯灌とは、ぬるま湯で故人の体を清める儀式です。
髪や顔を整えて、体をきれいにして旅立ちの衣装に着せ替えます。
故人の現世での穢れを流して、清らかな体で浄土へと送り出す宗教的な意味もあります。
以前は家族や近所の方が棺に納める前に行っていました。

最近では、納棺師と呼ばれる専門職が行う故人を棺に納めるサービスとして販売しています。
納棺師による湯灌の流れは以下の通りです。

  1. 口・鼻・耳・肛門の詰め物を交換する。
  2. 身体の清拭を行う。
    (体を拭き清めたり、専用の湯舟で洗い流す。)
  3. 衣装を着せ替える。
  4. 希望に合わせて口ひげ・あごひげを整え、化粧して棺に納める。

納棺師は専門職ですが、エンバーミングのような資格を必要としません。
しかし、吐出を抑える・着せ替え・化粧・口を閉じるなど高度な技術が必要です。
口腔などに詰め物をして、表情を穏やかにすることもできます。
納棺業者もしくは納棺士を雇用している葬儀社に就職して専門技術を習得します。

湯灌や清拭は故人の外観を整えることはできますが、腐敗の進行を抑えることはできません
ゆるま湯で全身を温めると、腐敗の進行が加速すると指摘する方もいます。
アルコールや濡れたタオルで全身を清拭して、ドライシャンプーで洗髪することで対応は可能です。
納棺師が故人の状態を判断して対応するので、過度な心配は不要でしょう。

湯灌の費用は10万円前後になります。
タオルなどで体を清拭して着せ替える簡易的な湯灌を
清拭(せいしき)」や「古式湯灌(こしきゆかん)」などと称して、金額の差をつけて販売している業者もあります。

湯灌から宗教的な要素を省いて、外見を整え美しくみせことを強調する場合に
ラストメイク」と言い換えることもありますが、専門技術を有する納棺師が対応します。

病院で逝去された方は病院で用意された浴衣に着せ替えられます。
故人にお気に入りの衣装や白装束に着せ替えたい場合は葬儀社に相談してください。

エンバーミングと湯灌・ラストメイクの違い

費用

エンバーミングは専用の薬剤と設備が必要なので15万~25万円と高額になります。
湯灌は専用の設備が必要ですが、10万円前後とエンバーミングより安価です。
ラストメイクは納棺師の技術と時間にかかる費用のみで5万円前後です。

ちなみに仲介業者の最大手の【小さなお葬式】では
湯灌を「湯灌納棺」として\99,000-
古式湯灌・ラストメイクを「化粧納棺」として\66,000-で販売しています。

火葬まで日数がある場合は、冷蔵設備を持つ葬儀社に依頼しましょう。

面会の自由度

小豆小僧
小豆小僧

外科的な処置を行うエンバーミングでは、
専用の施設で行うので立ち会うことはできません。
エンバーミングの施設では対面もできません

湯灌は場所を問わずに行うので遺族は立ち会い、
化粧・納棺の手伝いをすることが可能です。

エンバーミングを依頼したら希望通りの時間に対面できません。
葬儀日までに多くの時間を故人と対面を希望する場合は、
湯灌かエンバーミングのどちらを選択するのかは葬儀社と十分に話してください。

目的

エンバーミングは衛生保全と腐敗防止を目的としています。

湯灌・ラストメイクの目的は故人の外見を整えることで、
衛生保全が目的ではなく、腐敗の進行を抑えることはできません

ドライアイスを使用するか安置室の温度を調整して、
ご遺体を低温にして腐敗の進行を抑えます。
葬儀までの日数がかかる場合には、
ドライアイスの追加料金が発生します。
一般的なドライアイスの追加料金は、
一日で\10,000前後です。

小豆小僧
小豆小僧

ほとんどの方はエンバーミングでなく
湯灌・ラストメイクで対応されています

エンバーミングで注意すること

小豆小僧
小豆小僧

葬儀費用を抑えたい方にエンバーミングはおススメできません。

逝去から火葬まで7日程度にも関わらずエンバーミングを強く勧める葬儀社(担当者)は、
葬儀単価を上げるために販売していると個人的には思います。

詳しくは家族葬のらくおう(セレモニーハウス)は高すぎるのか調べてみましたをご確認ください。

ご遺体が「傷む」「腐る」など過激な言葉で不安をあおり、
脅迫するようにエンバーミングを提案されたと聞いたことがあります。
低温に管理できる施設に安置をすれば、一週間程度でも顔色の変化が目立たない方が大半です。
エンバーミング施設を持たない葬儀社は、火葬まで日数があるだけでエンバーミングを勧めません。

小豆小僧
小豆小僧

もしも顔色の変化が生じても納棺士による化粧処置で対応できます。
エンバーミングより経済的です。

ご依頼の件数が増える12月から3月までは、
火葬までに5日から10日程度待つことが基本です。
全てのご遺体にエンバーミング処置することは不可能です。

小豆小僧
小豆小僧

エンバーミングは葬儀社の都合で案内されます。

エンバーミング施設を運営している葬儀社に依頼したら、
エンバーミングが不要でも強く勧められるかもしれません。

エンバーミング施設を持たない葬儀社では、エンバーミングは
湯灌やラストメイクとの比較で軽く案内される程度です。

四国の四県にはエンバーミング施設がないので、
四国の葬儀社がエンバーミングを勧めることはないでしょう。

小豆小僧
小豆小僧

本当にエンバーミングが必要なのかは、
遺族自身が判断するしかありません。

「エンバーミングは不要」と主張する業界関係者もいますが、
個人的には「少数だがエンバーミングが必要な方もいる」です。
本当に必要だと思えば強く勧めますし、不要なら軽く説明するだけです。
納棺師による処置だけで済むなら説明さえしません

私がエンバーミングを勧めるのは以下の場合です。

  • 口からの吐出が多く、納棺師による処置で止めることができない場合
  • 年齢・死因等で状態が悪いと判断した場合
  • 事故で亡くなって修復が必要な場合
  • 一週間以上に渡り自宅で安置する場合

高額になるので葬儀費用に占める割合も説明します

高齢で闘病で亡くなった方は、やつれるのが普通です。
やつれた姿が闘病の証であり直視することが労わってあげることだと、私は考えます。
最後をどのような姿で送り出すか、遺族の意志で選択できます。

小豆小僧
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エンバーミングを一般的な方法として勧める葬儀社(担当者)は、
エンバーミング施設を持つ業者かもしれません。

繰り返しますが、日本のエンバーミングの普及率は約5%です。
火葬まで3~10日待つ場合でも、ドライアイスと納棺師の処置だけで対応している業者が大半です。

またエンバーミング処置をすれば、
湯灌・ラストメイク・清拭・ドライアイスは不要です。

湯灌やラストメイクなど遺体処置に関する項目が記載されていないか確認してください。

最後に

エンバーミングは必要とされている方には、「依頼してよかった」と満足していただけます。
故人のために、できることは全部したいとエンバーミングを希望される方も多くいらっしゃいます。
遺族が希望することを、葬儀社は可能な限り商品として提供します。

小豆小僧
小豆小僧

エンバーミングは高額なサービスなので、葬儀社には魅力的な商品です。
そのために湯灌や清拭で対応できることを、
エンバーミングに置き換えて説明する葬儀社もあるようです。

葬儀費用を節約するために家族葬や火葬式を選択したが、
葬儀社の勧められるままエンバーミングを選択して、
高額請求で後悔することがないようにしましょう。

エンバーミングは書面による遺族の同意が必要なサービスです。
同意して書面にサインをするのは消費者であるご遺族です。
正しい知識を持つことが後悔しない方法の1つです

小豆小僧
小豆小僧

エンバーミングが必要か判断がつかないなら、3社ほど葬儀社に相談して担当者の意見を聞くことが有効でしょう。

今回の記事について、ご不明な点・より詳細な説明が必要な方はお問い合わせフォーム
下記のコメントよりお問い合わせください。
エンバーミングについて疑問などあれば分かる範囲でお答えします。
また同業者の方、エンバーマー、納棺師の方でご指摘やご意見があれば聞かせてください。

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