なぜブローカー型葬儀社は高額になりやすいのか?他業種の仲介構造から見える“手数料と規制”を現役葬祭ディレクターが解説

お葬式の基礎知識
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不動産を借りるときや、保険に加入するとき、
私たちは「仲介手数料」や「説明義務」があることを、ある程度理解しています。
たとえ無料相談であっても、
その裏側で誰がどのように収益を得ているのかを、意識する機会があるからです。

一方、葬儀ではどうでしょうか。
突然の出来事に直面し、時間と心の余裕がない中で、
「低価格で満足」
「安心してお任せ」
「心に寄り添う」などの広告の文句を信じて、
深く考える間もなく葬儀社を決めてしまう方は少なくありません。

そのなかで、近年増加しているブローカー型葬儀社の仕組みは、
不動産仲介や保険代理店と本質的に似ています。
利用者が直接手数料を支払っていないように見えても、
そのコストはサービス全体の価格に組み込まれています。

大きな違いは、
不動産や保険には一定の開示ルールや規制があるのに対し、
葬儀業界では、仲介手数料や紹介料の規制はなく、
利用者が把握できる仕組みがほとんど存在しない点です。

この記事では、現役の葬祭ディレクターとしての経験をもとに、
ブローカー型葬儀社が高額になりやすい理由を
他業種の仲介構造と比較しながら、できるだけ分かりやすく解説します。
仕組みを知ったうえで選ぶための視点も紹介しますので、
「なぜ高くなったのか分からない」という後悔を避けるための参考にしてください。

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ブローカー型葬儀社とは何か

ブローカー型葬儀社とは、自社で葬儀を行うのではなく、
利用者からの依頼を受けて、地域の提携葬儀社へ仕事を紹介する事業者です。
インターネット検索や電話相談が窓口となり、
実際の葬儀サービスの提供は他の葬儀社が行う点が特徴です。

利用者から見ると、
「葬儀社に直接依頼している」ように感じやすい一方で、
葬儀サービスの多くは提携先の葬儀社が担います。
この窓口と実施主体が分かれている構造が、
ブローカー型葬儀社の基本的な仕組みです。

この仲介の形態は、葬儀業界に限ったものではありません。
不動産仲介や保険代理店、人材紹介など、
他業種でも広く見られるビジネスモデルです。
利用者には、
「どこに相談すればよいか分からない状況で、まず話を聞ける窓口がある」
という点で、一定の利便性があります。

その一方で、ブローカー型葬儀社では
どの葬儀社が担当するのか依頼時点では分かりにくいケースがあります。
打ち合わせの際に、
最初に対応したブローカー型葬儀社の担当者が同席することはありません。
そのため、利用者が誰が最後まで対応してくれるのかが曖昧になりやすいという側面があります。

重要なのは、
ブローカー型葬儀社を利用すること自体が「悪い」という話ではない点です。
問題になりやすいのは、
この仕組みを知らないまま
「すべてを任せているつもりで契約してしまう」ことにあります。

仲介ビジネスに共通する「手数料構造」

仲介ビジネスでは、
利用者が「手数料を払っている」という自覚を持たないケースが少なくありません。
不動産、保険、人材紹介など、分野は違っても、
収益の仕組みは共通しています。

それは、仲介事業者の利益が、サービス価格の中に組み込まれているという点です。
利用者が直接「仲介手数料」として支払わなくても、
そのコストはどこかで回収される仕組みになっています。

たとえば不動産賃貸では、
「礼金」や「敷金」といった費用が明示されます。
礼金は必須の費用ではありませんが、
少なくとも契約前に
「誰に、何の名目で、いくら支払うのか」が提示され、
借りる側はその条件を理解したうえで判断できます。

保険や人材紹介でも同様です。
利用者は無料で相談できますが、
その裏側では、保険会社や採用企業から
仲介事業者に報酬が支払われています。
重要なのは、こうした構造が
業界の前提として共有され、一定の説明や規制が設けられている点です。

一方、葬儀においても、
ブローカー型葬儀社が介在する以上、
広告費や紹介料といったコストは発生しています。
ただし、その多くは利用者に明示されることなく、
提携葬儀社が負担しています。

この結果、利用者から見ると
「定額プランで分かりやすい」
「手数料はかかっていない」ように感じられますが、
そのコストが実際には、
葬儀全体の価格構成に影響しているケースも少なくありません。

仲介手数料が存在すること自体が問題ではありません。
不動産や保険と同じく、
仲介には利便性や合理性があります。
しかし、葬儀サービスでは
その構造や内容を事前に知らされないまま打ち合わせに進むことが多く、
結果として
「なぜこの金額になったのか分からない」
という不満と後悔につながりやすくなります。

不動産・保険・人材紹介にある「公開」と「規制」

不動産や保険、人材紹介といった仲介ビジネスでは、
手数料や報酬の仕組みについて、
一定の「公開」と「規制」が設けられています。
これは、仲介が問題だからではなく、
利用者が不利な立場に置かれやすいことを前提にした制度です。

たとえば、不動産の賃貸取引では、
仲介手数料の上限は法律で定められており、
原則として「家賃1か月分+消費税」が上限です。
また、礼金や仲介手数料といった費用は、
契約前に書面で明示されるのが一般的です。

礼金は必ず支払わなければならない費用ではありません。
それでも、不動産取引では
「誰に、何のために、いくら支払うのか」が
契約前に示され、
借りる側が納得したうえで契約する仕組みになっています。
この点は、葬儀サービスとの大きな違いです。

保険の分野でも同様です。
保険代理店は、保険会社から販売手数料を受け取っていますが、
金融当局の監督下にあり、
利用者に対する説明義務や適合性の原則が求められます。
「この人に、この商品が本当に合っているのか?」という視点が、
制度として担保されています。

人材紹介業は職業安定法にもとづき、
厚生労働省および各都道府県労働局の監督を受ける許可制の事業です。
求職者は無料でサービスを利用できますが、
企業側が成功報酬を支払うビジネスモデルであることは
業界の前提として共有されています。
紹介料の存在自体が隠されているわけではなく、
行政による監督も行われています。

このように、他業種の仲介ビジネスでは、
手数料や報酬の存在を前提としたうえで、
「どこまで開示するか」
「どう制限するか」
制度として整理されています。
完全に透明とは言えなくても、
少なくとも利用者が構造を理解できる余地があります。

一方、葬儀業界ではどうでしょうか?
ブローカー型葬儀社が介在していても、
仲介手数料や紹介料について
利用者が事前に説明を受ける仕組みは、ほとんどありません。
上限を定めるルールもなく、
行政による監督はほとんどありません。

結果として、
利用者が不利な立場に置かれているに関わらず
「定額プラン」「安心」「お任せ」という言葉を信じて契約し、
後になって
「なぜこの金額になったのか分からない」
と感じることになります。
これは個々の事業者の問題というより、
仕組みそのものがそうなっていると考える方が自然でしょう。

葬儀業界にはなぜ同じ仕組みがないのか

不動産や保険、人材紹介といった仲介ビジネスでは、
手数料や説明に関するルールが法律や行政指導によって整備されています。
では、なぜ葬儀業界には、同じような仕組みがほとんど存在しないのでしょうか。

大きな理由の一つは、
葬儀業が、不動産業や保険業のように業そのものを包括的に規制する免許制・登録制の対象ではないという点です。

葬儀業には、事業開始にあたって必須となる国家資格や、
業法にもとづく許可制度が存在しません。
火葬場や遺体搬送など、業務ごとの個別規制はあるものの、
「葬儀業を営むこと自体」を直接規制する法律は整備されていないのが現状です。

また、葬儀は「サービス内容が定型化しにくい」という特性があります。
地域の慣習、遺族の希望、故人の遺志、火葬場の事情などによって、
同じ「家族葬」や「火葬式」であっても内容は大きく変わります。
このため、行政としても
一律の料金基準や上限を設けにくい事情があります。

さらに、葬儀サービスは強い緊急性を伴う取引です。
多くの場合、利用者は突然の出来事に直面し、
限られた時間の中で判断を迫られます。
このような状況では、
不動産のように複数の会社を比較したり、
契約条件をじっくり検討したりすることが難しくなります。

それにもかかわらず
葬儀業界では
「仲介が入っているかどうか」
「紹介料が発生しているかどうか」
について、利用者に事前に説明する義務はありません。
結果として、
形式的には合意しているが、実質的には理解していない
という状態で契約が成立しやすくなります。

重要なのは、
これは特定の事業者が悪意を持ち対応しているという話ではない点です。
制度として、
「説明しなくても違法ではない」
「開示しなくても問題になりにくい」
環境が長年続いてきた結果だと考える方が現実的でしょう。

そのため、
高額請求トラブルが発生しても
「自己責任」
「サインしたのだから仕方がない」
という形で処理されやすく、
同じような問題が繰り返されてきました。
他業種であれば制度的に防げているはずの問題が、
葬儀サービスでは個人の判断に委ねられているのが実情です。

ブローカー型葬儀社では手数料はどう扱われているのか

ブローカー型葬儀社を利用した場合、
見積書や請求書に「仲介手数料」「紹介料」といった項目が
明記されることはありません。
そのため利用者は、
「手数料はかかっていない」「中間マージンはない」
と感じやすくなります。

しかし実際には、
ブローカー型葬儀社が運営を続ける以上、
広告費や人件費、システム運営費などのコストは発生しています。
これらの費用は、
提携している葬儀社側が負担する形で処理されるのが一般的です。
紹介手数料の金額・割合は、契約内容などで大きく異なるようです。
そのため、一律に「いくら」と断定することはできませんが、
業界内では、この構造に強い問題意識を持つ声もあります。

もちろん、これはあくまで一個人の実務感覚による指摘であり、
すべてのブローカー型葬儀社や提携葬儀社に当てはまる話ではありません。

しかし、
不明な紹介料を提携葬儀社側が負担する構造がある以上、
最終的な費用に影響が出やすいこと自体は、
業界構造として否定できない側面があります。

仲介の仕組み自体は、
不動産や人材紹介など、他業種の仲介ビジネスと本質的に同じです。
問題は、
葬儀サービスではその構造が、利用者に説明されないまま、
契約が進んでしまう点にあります。

提携葬儀社は、
ブローカー型葬儀社への手数料を回収する必要があります。
仲介手数料は見積書に直接記載されないので、
そのコストは、
オプションやグレードアップという形で回収されることがあります。
以下は、ブローカー型葬儀社を通じた葬儀で、
実際に提示されたオプション明細の一例です。

もちろん、これらのオプションすべてが不要ではないのでしょう。
実際に必要なケースもあり、
内容自体が不当であるとは限りません。

ただし、
どこまでが必須で、どこからが任意なのかを理解しないまま選ぶと、
当初想定していた金額から大きく膨らむ可能性があります。
利用者がその背景を知らないまま
「これは普通」「皆さん付けています」と説明を受けると、
冷静な判断が難しくなります。

重要なのは、
手数料が存在すること自体を問題視するのではなく、
その扱われ方が見えにくいことです。
不動産であれば仲介手数料や礼金が明示され、
保険であれば代理店報酬の存在が前提として共有されています。
一方、葬儀では、
同じようなコストが価格に影響していても、
利用者がそれを認識する機会がほとんどありません。

この「見えなさ」こそが、
ブローカー型葬儀社を利用した際に
「思ったより高くなった」
「なぜこの金額になったのか分からない」
という後悔につながりやすい要因です。

小さなお葬式・よりそうお葬式・イオンのお葬式は何が違うのか

ブローカー型葬儀社という点では、小さなお葬式・よりそうお葬式・イオンのお葬式はいずれも共通しています。
一方で、集客の方法や、見積・請求への関与の度合いには違いがあります。

  • ブローカー型葬儀社の代表例としてよく挙げられるのが「小さなお葬式
  • 事前相談をアピールするブローカー型サービスが「よりそうお葬式
  • 提携葬儀社への関与が比較的強いブローカー型葬儀社として「イオンのお葬式」があります。

まとめ|規制がない以上、ブローカー型葬儀社では「自衛」が必要になる

ブローカー型葬儀社が存在すること自体は、
決して問題ではありません。
複数の葬儀社を横断して探せる仕組みや、
初動の窓口としての役割には、一定の利便性があります。

しかし、
不動産や保険のように仲介手数料の開示義務や
業法による規制がない葬儀業界では、
その仕組みを理解しないまま利用すると、
判断の負担がすべて利用者側に集中します。

見積書に仲介手数料は記載されず、
ブローカー型葬儀社の運営費用などは提携葬儀社側で吸収される。
その結果、
オプションやグレード調整といった形で
最終的な葬儀費用に影響が出やすくなる――
これが、ブローカー型葬儀社に共通する構造です。

もちろん、
提示されるオプションのすべてが不要というわけではありません。
実際に必要なケースもあり、
内容そのものが不当だと断定できるものではありません。
ただし、
どこまでが必須で、どこからが任意なのかを
利用者自身が理解しないまま選択すると、
「思っていた金額と違った」という後悔につながりやすくなります。

問題は「仲介」という仕組みではなく、
手数料やコスト構造が見えにくいまま契約が進んでしまうことです。
規制がなく、説明義務も明確でない以上、
ブローカー型葬儀社を利用する際には、
利用者側が仕組みを理解し、自衛することが前提になります。

大切なのは、
「使うか、使わないか」を感情で決めることではありません。
仕組みとメリット・デメリットを知ったうえで、
自分の状況に合った選択ができるかどうかです。

この記事が、
葬儀という一度きりの場面で、
後悔の少ない判断をするための
ひとつの判断材料になれば幸いです。

ご意見・ご指摘などはお問い合わせフォーム、下記のコメント欄からお願いします。
同業の方からのご意見も大歓迎です。

※引用している発言や資料は、あくまで一例であり、
すべてのブローカー型葬儀社や提携葬儀社に当てはまるものではありません。

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