「高すぎる」「強引な勧誘」「説明不足」――インターネット上では、エンバーミングに関するこのような不信感や不安を抱く口コミが散見されます。
大切な故人様へのために良かれと思って依頼したサービスが、後から「こんなはずじゃなかった…」と後悔に繋がるケースは少なくありません。
今回の記事は、葬儀業界で働く現役の葬祭ディレクターである私の視点から、エンバーミングに関する具体的な口コミを深堀して分析。
なぜ一部の葬儀社はエンバーミングを強く勧めるのか?
あなたが高額請求やトラブルを回避し、納得のいく選択をするための判断基準を解説します。
※エンバーミングの基本的な知識については、まず下記の記事でご確認ください。
【専門家解説】エンバーミングとは?目的・費用・メリット・流れのすべて
この記事は口コミサイト「みん評」などに掲載された内容(2025年8月時点)を参考に執筆しています。
口コミはあくまで個人の感想であり、すべての方に当てはまるものではありません。
なぜエンバーミングで「損」をしてしまうのか?口コミから見える実態
エンバーミングは適切な状況で提供されれば、非常に満足度の高いサービスです。
しかし、普及率のわりに苦情が多く見られます。
その主な原因は、ご遺族のエンバーミングに対する理解不足と、一部の葬儀社の不適切な販売方法にあると考えられます。
実際に以下のような口コミが寄せられています。
亡くなった当日に連絡すると最初に進められたのがエンバーミングでした。
みん評 葬儀社の口コミ・評判(https://minhyo.jp/sougisya)
20万円との案内ですが、実際にはエンバーミング工場までの寝台車料金がかかり
大体税込みで24万円でした。エンバーミングから帰ってきた遺体は綺麗に処理
されてファンデーションもされていて健康だったころの顔にはやって良かったと
いう点だけは評価したいです。(なので☆1つです)
(以下省略)
(略)
みん評 葬儀社の口コミ・評判(https://minhyo.jp/sougisya)
あとエンバーミングですね。腐敗するなど言われて、断る選択肢はないというか、ことわる事は出来ない。断ってはいけないのかと思っていました。マストな感じです。税込28万以上でした。
(以下省略)
母のお葬式をお願いしました。
みん評 葬儀社の口コミ・評判(https://minhyo.jp/sougisya)
亡くなった当日で疲れているのに延々とエバーミングの営業。
(以下省略)
(略)
みん評 格安葬儀サービスの口コミ・評判(https://minhyo.jp/kakuyasusougi)
棺・エンバーミング・バス・お坊さんへのお土産・生花など
この時は追加料金が本当にいらないとのことで依頼したのですが葬儀屋さんに必要ないと言ってもしつこく粘られ売りつけられました
(以下省略)
(略)
何かにつけて追加で~あります。
(略)
エンバーミングも個人によっては不必要な場合もあるのでは?
(以下省略)
みん評 格安葬儀サービスの口コミ・評判(https://minhyo.jp/kakuyasusougi)
これらの口コミから、多くのご遺族が「必要性を感じないまま契約してしまった」「高額な費用になった」という点で共通していることがわかります。
エンバーミングの「説明不足」が後悔を招く
エンバーミングの契約時に、その具体的な処置内容が十分に説明されないことで、後になってから「こんなはずではなかった」と後悔する方が少なくありません。
SNSでは下記の投稿を目にしました。
#エンバーミング 。
— mosrite 💙💛 owner (@mosriteowner) May 16, 2025
当初はぼんやりとした知識でしかなかったんですよ。なんか点滴でもやるのかなぁ、くらいの知識で。考えりゃわかることで、亡くなった方に点滴できるわけがないんですよ。
①動脈を露出して薬をポンプで入れて、
②静脈から血液を排出して、
③更に防腐液を注入する。…
このように、ご遺体を切開し、体液や血液を入れ替える外科的な処置であることが、事前にきちんと伝わっていないケースが多く見られます。
腹腔の体液や残留物を除去する処置も行われるため、「そこまでするのは可哀そう」と感じ、選択肢が変わる方も少なくないでしょう。
老衰で逝去された高齢の方の体を切開し、高額なエンバーミングをすることに疑問を持つ声は多く見かけます。
費用に関する「知らないと損する」ポイントと高額請求を避ける知識
エンバーミングは専用の薬剤と設備、エンバーマーの人件費も計上されるので、15万~25万円と高額なサービスです。
葬儀費用を抑える目的で火葬式を選んだにもかかわらず、不本意なエンバーミングを販売され高額な請求をされた事例が散見されます。
私がSNSなどで見聞きした事例では、エンバーミングが項目に含まれているにもかかわらず、ドライアイスや「アフターケア」といった項目が追加で請求されているケースがありました。
「アフターケア」という言葉は、葬儀サービスの用語としては馴染みがなく、一部の業者が独自に設定した費用だと考えられます。
このように不要な項目が計上されることで、ご遺体の処置にかかる費用が40万円以上になっている事例も存在します。
ご遺族が無知であったり、判断力が低下していれば、一部の葬儀社は徹底的に高額請求を試みる場合があります。
エンバーミングは一部の葬儀社にとって、葬儀費用を上げるツールになっているのが現状です。
エンバーミングのより詳細な費用相場、料金の内訳、そして高額請求などのトラブルを避けるための具体的なポイントについては、【最新版】エンバーミングの費用相場と内訳|高額請求を避けるポイントをご確認ください。
エンバーミングで後悔しないための判断基準と賢い選択
ご遺族がエンバーミングで損をしたり、後悔しないためには、ご自身でその必要性を冷静に判断し、賢く葬儀社を選ぶことが重要です。
あなたとご遺体の状況から必要性を判断する
エンバーミングはすべてのご遺体に必要というわけではありません。
以下の判断基準を参考に、故人様とご遺族の状況から最適な選択を見極めましょう。
エンバーミングが必要なケース
- 事故などで損傷が激しく、ご遺体の修復が必要な場合。
- 感染症が不安だが、故人様と触れてお別れをしたい場合。
- 口・目・耳からの吐出が多く、納棺師による処置で止めることができない場合。
- 1週間以上に渡り自宅で安置する場合。
- 海外への搬送が必要な場合。
湯灌・ラストメイクで十分なケース
- 葬儀費用を抑えたい場合。
- 老衰で亡くなった方など、ご遺体の状態が比較的安定している場合。
- 火葬までの日数が3~4日など短い場合。
エンバーミングと湯灌の具体的な違いや、どちらを選ぶべきかの詳細な比較については、以下の記事も参考にしてください。
▶︎ 関連記事:【徹底比較】エンバーミング vs 湯灌!故人を見送るための後悔しない選択
葬儀社の提案を鵜呑みにしない!!対応を見極めるポイント
「ご遺体が傷む」「腐敗する」「故人様のため」といった言葉で不安を煽る葬儀社には注意が必要です。
心理的に不安定な状況で打ち合わせすると正常な判断が困難かもしれません。
ほとんどの場合、低温管理できる安置施設と納棺師による適切な処置で十分に故人様のお顔を安らかに保つことが可能です。
- 施設を持つ葬儀社の傾向: エンバーミング施設を持つ葬儀社は、施設の維持費や稼働率を確保するためにエンバーミングを積極的に提案する傾向があります。
エンバーミングの必要性を感じなければ、施設を持たない葬儀社への依頼も検討してみるのも良いでしょう。 - 私(葬祭ディレクター)の視点: 私自身は、本当に必要だと判断すれば強く提案しますが、不要な場合は軽く説明する程度に留めます。
納棺師による処置だけで済むなら、エンバーミングの説明さえしません。
ご遺族の意向を確認して、故人様のご状態に真摯に向き合う姿勢が大切です。
以下の記事は葬儀費用が高額になった事例や、葬儀社の不適切な説明について具体的な指摘をしています。このような情報も参考に、冷静な判断を心がけましょう。
▶︎ 参考記事:【葬儀費用】母の死のショックで理解できなかった葬儀社の説明…「57万円の追加請求」に26歳一人娘の後悔 (現代ビジネス)

葬儀社の言うことを全て鵜呑みにせず、疑問に思ったことは質問することが大切。
複数の葬儀社から話を聞くことも、後悔しないために検討しましょう。
【地域別参考情報】大阪・京都・兵庫のエンバーミング施設を持つ葬儀社
大阪府:約426社
京都府:約97社
兵庫県:約100社
上記は葬儀社の数で総数は約620社、葬儀式場の数はもっと多くなります。
620社以上あるなかでエンバーミング施設を持つ葬儀社・葬儀会館は以下の通りです。
2024年時点で奈良県と和歌山県には、エンバーミング施設はありません。
施設を持つ葬儀社を知ることは、葬儀社を選択する際の参考になるでしょう。(2024年8月時点)
- 公益社(京都府・ブライトホール)
- あんしん祭典セレマ(京都府)
- ライフアンドデザイン・グループ西日本が運営する小さなお葬式ホール
(京都府・大阪府・兵庫県、旧・家族葬のらくおう、セレモニーハウス) - 公益社・エンディングハウス(燦HD、大阪府・兵庫県)
- ベルコ・シティホール・ユアホール(大阪府・兵庫県)
- 玉泉院・メイプルホール(大阪府)
- タルイ会館(燦HD、兵庫県)
上記に該当しない葬儀社では、湯灌業者の(株)CSCサービスに依頼します。
多くの葬儀社からエンバーミングだけでなく湯灌などの依頼も受けています。
上記の一覧は2025年8月時点のIFSAの公式情報、および独自調査に基づき作成していますが、葬儀社の施設状況は変更される場合があります。
もしお気づきの点や最新の情報がございましたら、当サイトのお問い合わせフォームよりご一報いただけますと幸いです。
読者の皆様のご協力が、より正確な情報を提供することに繋がります。
まとめ
エンバーミングは、適切な状況で提供されれば非常に満足度の高いサービスです。
しかし、ご遺族の不安に付け込み不要なサービスを販売する葬儀社が存在することも事実です。
後悔しないためには、ご遺族が正しい知識を持ち、冷静に判断することが何よりも重要です。
- エンバーミングの基礎知識: 【専門家解説】エンバーミングとは?目的・費用・メリット・流れのすべてで全体像を把握しましょう。
- 費用面: 高額請求を避けるポイントや適正な費用相場は、【最新版】エンバーミングの費用相場と内訳|高額請求を避けるポイントで詳しく確認してください。
- 比較検討: 湯灌との違いや選択の判断基準は、【徹底比較】エンバーミング vs 湯灌!故人を見送るための後悔しない選択」で比較検討しましょう。
2024年時点でのエンバーミング普及率は約5%であり、この数字からもわかるように、エンバーミングはすべての方に必要な一般的な処置ではありません。
お金に余裕がある方、本当に必要な方が受けるサービスであり、大半の方には納棺師による処置で十分だということを覚えておきましょう。
今回の記事が、あなたがエンバーミングについて冷静に判断し、後悔のない選択をする一助となれば幸いです。
個人的な意見なので、賛成・反対意見があれば、下記のコメント欄、お問い合わせフォームからお願いします。
また同業者の方、エンバーマー、納棺師の方でご指摘やご意見があれば聞かせてください。
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